花札を使う博打から生まれた隠語は沢山あります。
代表的な隠語に “シカトウ” (とぼける事、無視する事)と言うのがありますが、若者もお年寄りも良く使います。 語源は花札の「紅葉の十の札」の絵柄から来ているそうです。
紅葉の十の札の左下の鹿が首を回して横を向いている姿を、「とぼけている」 と捉えているのでしょう。 花札は1は松、2は梅、3は桜、4は藤、5は菖蒲、6は牡丹、7は萩、8は坊主、9は菊、10は紅葉、11は雨、12は桐 となっていますが、この札の内、雨と桐を除いて、オイチョカブというゲームを行うのですが、これが、すこぶる面白いゲームなのです。
胴元と複数の子が2枚ないし3枚の札の合計数字の下一桁の数で勝ち負けを競うのですが、スリリングな勝負の場面で、独特の計算隠語を使います。 例えば、坊主と坊主と桜が出れば、「パッパーサン貧乏人のカブ」 藤と萩と坊主が出れば「シンシチハチ岡崎のカブ」 菖蒲、牡丹、坊主が出れば「ゴロッパチの茶碗カブ」となります。
合計数の下一桁が0が一番弱く、9が一番強いのですが、胴元の松と藤、松と菊、子の嵐(同札3枚)は特権で9(カブ)に優ります。 下一桁が1を「チンケ」と言い、しみったれの人のことを、隠語として「あいつはチンケな野郎だぜ」と使います。 また、0を「ブタ」と言いい藤、菖蒲、菊が出ると「ゴロンク純粋のブタ」と表現します。 「チンケに敗れるブタもある」とか言いながら花札を床に叩きつける場面はまさに渡世人の晴れ舞台なのでしょう。
坊主、菊、桜が出ると 「ゲェー、ヤクザが出た」 と言いガックリします。 8,9,3ですから合計20で、「ブタ」です。 何の役にも立たず朝から酒を飲んでいるプー太郎のような人を「ヤクザな野郎だぜ」と言い、これが転じて、暴力団を「ヤクザ」と呼ぶようになったと、警察関係の人が教えてくれました。
花札を知らない若い人たちに、博打を通じ、四季折々の花を覚えてもらったり、チンチロリンを教えることは、日本文化の継承につながると思うのですが、皆さんはどう思いますか?
“おしゃべり九官鳥”